IT・コンテンツビジネス講座@高知工科大学
「データ・AI活用ハンズオンセミナー」
令和3年11月15日、高知工科大学生を対象としたIT・コンテンツビジネス講座「データ・AI活用ハンズオンセミナー」を高知工科大学永国寺キャンパスで開催しました。
この講座は、株式会社キカガク 中別府 大地 氏を講師に招き、データ分析・AI 開発を体験し、未来のキャリアを考えるきっかけを掴むことを目的に、2回にわたりデータ分析の基礎から実践までを学ぶハンズオンセミナーです。今回は、第2回目の「データ分析実践」をレポートします。
講義内容
「AIハンズオンセミナー」のカリキュラムはこちらになります。
第1回 11月11日
データ分析の準備から、実際の分析の手法について学びます。
- 準備
- Googleアカウント作成
- Googleデータポータル
- データ分析体験
- データ分析の進め方
- データ分析STEP1:課題・目的の設定
- データ分析STEP2:データ取得・構造化
- データ分析STEP3:探索的データ分析
- データ分析STEP4:確証的データ分析
- データ分析STEP5:結果の解釈
- 【補足紹介】AI開発体験
- Microsoft社プレビュー版の機械学習モデル作成ツールを用いたAI開発
- 人がマスクをしているかを画像で判別する
第2回 11月15日
実際にデータを活用して、第1回で学んだ分析を実践します。
- 課題設定
勤続年数、所属部署、給料、業務満足度などの基礎データから社員のワークエンゲージメントを上げるための施策を考える - 準備
- データの配布・説明
- Googleデータポータルの準備
- データ分析実践
- 5STEPサイクルを活用して、データを分析
- 課題を解決するための施策を考える
データ活用人材が求められる背景

昨今、情報通信技術の進歩とともに、インターネットやスマートフォン、IoT等を支えるデータ活用人材の需要が増加しています。
例えば、動画サブスクリプションサービスではユーザーが「何曜日にコンテンツを利用しているのか、どこで見ているのか、動画のどのタイミングで巻き戻しや早送りをしたのか」のようなデータを取得・解析し、ユーザーの好みを分析しておすすめの動画を提案する「レコメンデーション」に注力しています。再生される作品のおよそ 80% は検索ではなく、レコメンデーションを経由して選択されているそうです。
このように、データを収集し、統計や機械学習を用いて物事を把握したり、人の意思決定を支援すること(データから価値を生み出すこと)を「データ活用」といい、そのために必要なスキルをもった人を「データサイエンティスト」と呼びます。
ちなみに、よく耳にする「AI (artificial intelligence) 」とは人工知能の略称で、非常に概念が広い言葉です。
AI活用とは、作業の効率化・自動化を目的として、人間が行ってきた作業や考え方をコンピュータにも同じように実行させようというもので、その結果、作業の効率化や自動化につなげようというものです。
データ・AI活用ができる人材になるためには?
データ・AI活用に必要なスキルとしては、下記のようなものがあります。
- 課題設計スキル
- 環境構築スキル
- データ収集スキル
- 分析スキル
- 仮説立案・検証スキル
- 結果の解釈スキル
これらを身に付けるためには、数学(微積分・線形代数・確率・統計)やExcel / BI ツール(データ操作・可視化・一部のデータ分析手法の実装)、プログラミング(データ収集・データ操作・可視化・分析・機械学習アルゴリズム実装・システム組み込みなど)を用いることが一般的です。
データ分析実践
第1回ではデータ分析の進め方や分析データをGoogleポータルで可視化する方法、探索的データ分析(データから課題を発見する分析方法)などを学びました。第2回となる今回は仮想企業のデータから、社員のワークエンゲージメントを上げるための課題を解決する施策を考えます。
データサイエンティストとして、分析と施策提案を行う
今回は調査結果データとGoogleデータポータルを接続し、データを可視化させて分析を進めていきました。今回の演習では、学生はある企業のデータ分析を依頼されたデータサイエンティストとして、約2万件の調査結果を分析します。そしてその結果から、社員のワークエンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)を高める施策と、それをどのように実現するのかを提案します。
講師の指示に従いデータをGoogleデータポータルに接続させます 約2万件のデータを分析していきます
仮説を立て分析を行う
まずはデータを可視化する前に、役職(部署)ごとに仕事や職場環境、人間関係の満足度に違いがあるのではないか等の仮説を立てることから始めました。学生は隣同士で話し合いながらデータから読み取れる仮説を考えていました。
その後は、データを集計・可視化し結果の考察を行います。 データを分かりやすく可視化するために棒グラフを作成する作業があり、戸惑っている学生もいましたが、講師陣が画面共有や個別対応を行いながらグラフの作成をサポートしていました。

自分たちで仮説を立て、分析し、意思決定に活かす

ここまでは講師が用意した仮説の結果を一緒に考察してきましたが、最後に演習として、学生が自分たちで仮説立てから探索、結果考察、「何をすれば課題である社員のワークエンゲージメントを上げられるのか」を提案する(次の意思決定の支援)ところまで取り組みました。学生が講師と意見交換をしている場面もあり、データ分析の世界に夢中になっているようでした。自分で立てた仮説と分析した結果が一致しないという学生もいましたがそれは”反証”につながり、分析結果をもとに感覚での誤った憶測を正すことができる可能性があります。
データを使う上で、Googleデータポータルのように便利なツールを積極的に活用し数字の出し方や見せ方を工夫することで相手を納得させることができる力が生まれます。考えることはとても大変だが、大事なのは事前にしっかり仮説を立てて、実際の結果を基に次の意思決定を行うことだ、と講師から学生へのメッセージがありました。
オリジナルのデータ分析を行う 講師に自分の考えを積極的に伝えている学生もいました
キャリア設計をする上で大事な事
講座の最後に中別府氏から自身の経験を基に、学生に向けて今後の会社選びやキャリア設計を考える上でのお金についてのお話をいただきました。

世の中においてお金はとても大事なものです。皆さんの中には将来の夢やこの道に進みたいというのが決まっていない方もいると思います。本当にやりたい事や進みたい道が決まったときに、お金があると選択肢が広がります。また、お金があると精神的な余裕も生まれます。皆さんがこれからのキャリアを考えるにあたって、稼ぐためにはとはどんな業界がいいのか、そもそもどんな稼ぎ方があるのか、社会のお金はどこから生まれているのか考えたことはありますか?こういった事は調べたらいくらでも手に入りますので自分から調べるということはとても重要なことです。これから就活でどんな企業があるのか調べる際はこの事を思い出して、その業界や会社の給与バランスや利益率、働き方などを軸に選んでみるといいのではないかと思います。
ご自身も学生時代にお金に苦労されたことがあったそうで、そういった経験を基にお金の重要性についてお話しをいただきました。まさにこれから就職活動を行う学生には、具体的でリアルな話として参考になったのではないでしょうか。
こうして、高知工科大学生を対象としたIT・コンテンツビジネス講座「データ・AI活用ハンズオンセミナー」は終了しました。2回の講座を通して、データ分析の進め方を学び、実際に分析を実践し、さらにはキャリアについてのお話もしていただきました。受講された学生達には、これから重要になってくる技術に触れ、将来を考える良いきっかけになったと思います。