SDGs×デジタルセミナー「デジタル化から取り組むSDGs」開催レポート
2021年10月4日に「デジタル化から取り組むSDGs」セミナーをオンラインで開催しました。
日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリスト・業務執行役員の西脇 資哲氏を講師に迎え、SDGsについて「具体的に何をすればいいのか」「デジタル化がどうSDGsに繋がるのか」など、講師と参加者のコミュニケーションを中心とした講座の様子をレポートします。
講座内容
SDGsとCSR・ESG・サスティナビリティの違いや、SDGsがなぜ企業活動にとって重要なのかという基礎知識から、「デジタル化とSDGsの関わり」までIT業界の最前線で活躍されている講師にご登壇いただきました。
講座の詳細については、募集ページをご覧ください。
最初に 「一緒に考え、アウトプットをする講座に」
最初に、西脇氏から「スマートフォンを手元に用意してほしい」とアナウンスがありました。
SDGsについては、「世の中で、地球で、どういうことが起きているのか?私たちは何をしなきゃいけないのか?どんな課題があるのか?」を知ることが重要です。
そして、その課題に対して、明日から、来週から、来月から、年内に始めるアクションを考えてほしいです。
そのアクションに結び付けるためにも、アウトプットをしながら、皆さんと一緒に考えていきましょう。
オンラインのセミナーですが、話を聞く(インプット)だけではなく双方向にコミュニケーションをとりながら進められるアウトプットを重要視したセミナーでした。
最初の質問「100年後も続くだろうか?」
最初に、西脇氏から「今の生活や当たり前にあるものは100年後にも続くだろうか?」という問いかけがありました。
そして画面にQRコードが表示され、読み込むとアンケート回答ができるように。
受講生が回答をすると、アンケートの結果が講座の画面にリアルタイムに反映されていきます。
半分以上の方が「わからない」と回答されており、持続可能だとははっきり言えないと考えている人が多いということがわかりました。
さらに、西脇氏から私たちの周りで起きている変化として、衝撃的な数字が次々と発表されていきます。
- アジアを中心に、2050年には100億人に迫る人口爆発が起きる
- 2030年にもっとも飢餓者が多くなるのは、人口爆発が起こるアジアではなくアフリカである
- 世界の森林のうち50%はすでに消失しており、20%が消失の危機にある
- 2050年には海洋プラスチックゴミの重量が魚の重量を超える
- プラスチックゴミの摂取率は、ウミガメで52%、海鳥の90%
これらの事実や試算をみるだけで、今の生活がもう持続可能ではないことが感じられます。
SDGsとは?
持続可能ではないということは、どうにか解決しなければなりません。
そのために設定された、「国際社会共通の目標」がSDGsです。2050年、100年先のことではなく、2030年まで、つまりあと9年間の目標ということを西脇氏は強調されました。
SDGsの17の目標
SDGs策定の背景がわかったところで、改めてSDGsについて考えていきます。
SDGsは2030年に向けた17の目標を設定していますが、3つの側面を持っています。
では、それぞれどんな目標なのでしょうか。目標を知っている方がどのくらいいるのか、アンケートが行われました。
「なんとなく知っている」「知っている」という方が多く、参加者の認知度が高いことがわかりました。
各目標について西脇氏から説明があった後に、さらに「17の目標を知ってどう思いましたか?」という質問も、参加者に投げかけられました。フリーコメントで、参加者からの回答が集まりました。
「取り組むべき目標が多く課題が大きいので具体的な行動がわからない」など参加者にとっては難しい印象です。
西脇氏は、「17のうち全部やるのではなく、どれに取り組んでいくかを決める。意識を持つことから始め、興味のあることから、自分のできることからやっていくことが大事」ということを強調していました。
企業のSDGs活動
ここからは、企業に目線を移して話が展開されました。
SDGsはなぜ企業活動に重要なのか?
企業がSDGs活動を重要視する理由としては、投資家や社会全体がESGと呼ばれる「環境」「社会問題」「企業統治」に対しての取り組みを考慮して企業をみるようになったという背景があります。ESGを意識していないとヒト・モノ・カネが集まりづらくなったことで、企業にとってはSDGsに取り組む重要性が増したのです。
具体的なメリットとして、以下の内容が紹介されました。
- 全世界で年間約12兆ドル(1,331兆円相当)の市場機会がある
- 2030年までにトータルで約3億8,000万人の雇用が創出される
- 企業イメージの向上につながり、商品やサービス購入の動機になる、優秀な人材を集めやすくなる
- SDGsに取り組む企業は投資家や取引先が企業を選ぶ際に好まれる
SDGsは、ボランティアでも事業にとって余計なものでもなく、大きなプラス効果を企業にもたらすので、積極的に取り組む必要があると強調されていました。
企業での取り組み事例
それでは、日本の企業で具体的にどのような取り組みがされているのでしょうか。
西脇氏からは外務省が行う、SDGsの達成に向けて優れた取り組みを表彰する「SDGsアワード」の事例について紹介されました。
そこで、西脇氏から「皆さんの企業でSDGs活動は?」との質問が投げかけられました。
企業の事業、事業の延長線になるアイデアなど、身の回りの取り組みを考えて回答されていました。
すでに取り組まれている企業もありますが、「分からない」「取り組む予定はない」と回答した参加者も半分近くおり、まずはセミナーなどに参加してSDGsの意識を高めていく必要があると西脇氏からコメントがありました。
個人のSDGs活動
続いて、私たち個人は具体的にどのような行動ができるのか問われました。
西脇氏からは、 以下のことが提案されていました。
- 紙パッケージの商品を購入する
- プラスチックストローやカップをなるべく利用しない
- 地産地消および認証マークのある商品を選ぶ
- 検索エンジンにECOSIA(https://www.ecosia.org/)を使う
- SDGsイベントへの参加、SDGs活動の勉強会や啓発活動
個人の意識が高まることで買い物が変わり、顧客に選ばれる商品も変わります。SDGsに取り組む企業が生き残る構図が、ここでも見えてきました。
このような身近なことであれば、すでに私たちが取り組んでいるSDGs活動があるのではないかと気付かされます。
「皆さん自身のSDGs活動は?」と西脇氏からの問いかけに対して、ほとんどの方が「取り組んでいる」と回答されていました。
SDGsとテクノロジー
ここまで説明されてきたSDGsについては、デジタルテクノロジーやバイオテクノロジーなど最先端の技術を使うことが達成に大きく貢献します。
そして、言葉としてよく耳にすることが多くなってきた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」はSDGsを達成するための鍵と言われており、推進をしていくことが重要です。
具体的な事例としては、こちらの内容が紹介されました。
働き方や社会との接点など人間社会についてはもちろん、ほかにも森林比率の把握や海の生き物の個体把握など、地球環境全体でITが活用されている事例についても紹介されました。
私たちにできることを考えよう、行動をしよう
SDGsに関する活動をする際には、SDGsのロゴやアイコンを使用することができますが、これらを使うということは、「SDGsの取り組みをしている」と発信することになります。
ロゴやバッジは誰でも使えるようになっていますが、うわべだけSDGsに取り組んでいるように見えて実態が伴わない「SDGsウォッシュ」の状態にならないように、気を付ける必要があります。(資金調達や営利目的の活動であれば申請が必要)
明日から何をしますか?
最後に、明日から実行するSDGs活動を参加者が宣言しました。
「家族に話す」「会社で共有する」「認証マークをデスクトップに設定する」「近場は車を使わない」などさまざまなアクションプランが出ました。
身近なことから始められる、できることから始めていこうと参加者の意思が感じられました。
最後に
最後に、西脇氏から締めくくりのメッセージをいただきました。
SDGsは、社会にも実際にも企業にも個人にもプラスになる活動です。嫌々取り組んだり、ボランティアでする活動ではありません。しかもそれをデジタルを武器にして達成することができます。
まずは皆さんがアウトプットされた今日できる活動から進めていただきたいと思っています。
講座を受ける前は、「SDGsは壮大な目標」と思っていましたが、
- 紙パッケージや認証マークのある商品を選ぶこと
- SDGsの17の目標について知ること、画像をデスクトップに保存して日々意識すること
- 家族に話をすること
など、日常の中で取り組める身近なことが、目標達成に繋がっているということがわかりました。
今回の講座は、参加者と講師とで時々コミュニケーションを取りながら、SDGsについて学び、"自分ごと"として明日からできるアクションを自然と考えられるような、素晴らしい講座でした。