令和4年度デジタルクリエイター育成講座成果発表会
アニメーションやCG、ゲーム制作などに関心のある方に、県内のIT・コンテンツ関連企業が求める実践的なクリエイティブスキルを身につける「デジタルクリエイター育成講座」が開催されました。
本講座は、以下の5つの講座で構成され、令和5年1月からスタートしました。
- 3DCGデザイナー育成講座
- ゲームプログラマー育成講座
- 2DCGデザイナー育成講座
- 2Dアニメーター育成講座
- 共通基礎講座
令和5年3月18日、ちより街テラスにて開催されたこの「成果発表会」は、その締めくくりとなるもので、各自が講座の中で制作した作品の発表を行います。
■講師総評
最初に、各講座の講師から受講者に対する総評が行われました。
当日会場に来られなかった講師の方からは映像や音声でメッセージが寄せられていました。
「こんな短期間でここまで出来た自分を褒めてあげてください」
「自身を持って発表してくださいね」
などの優しい言葉に、会場内の空気が柔らぎました。
■3DCGデザイナー育成講座の作品発表
まずは、「3DCGデザイナー育成講座」の参加者の発表です。
本講座はゲームやアニメ業界などの3DCGデザイナーが利用している「Blender」という3DCG作成ソフトを使い、その基礎知識からさまざまな演出効果まで学んでいく内容となっています。
参加者は自身で設定したテーマに基づき、数秒の3DCG動画を制作しました。
ソフトを初めて触る方も多かったようで、
「普段は平面の作品をつくることが多いので、Blenderを使って3Dを描くのは難しかった」
「動画の書き出しを朝9時に始め、終わったのは夜10時。それが一番大変だった」
といった感想が語られていました。
講師を務めた映像作家・strings VY氏からは、完成度の高い作品の数々に感心しつつ、
「植物を描く場合は動きをつくると良い」
「ライティングにこだわると、より世界観が伝わる」
「視点が切り替わった先の物語が重要。見せたいオブジェクトを一つに絞り、大きく見せることでワクワク感が増してくる」
といった、さらに作品をブラッシュアップするプロならではのテクニックを、参加者にアドバイスしていました。
■ゲームプログラマー育成講座の作品発表
続いて「ゲームプログラマー育成講座」の参加者の発表です。
本講座は、ゲームエンジン「Unity」を用いながらゲーム制作に必要な知識・スキルを身に付ける内容となっています。
参加者はUnityで制作したブロック崩しゲームを発表。併せて、Unityで動作するキャラクターも制作していました。
講師を務めたmonoAI technology株式会社のエンジニア・原田恒平氏は、
「ゲームフローをきちんと実装できている点が良かったと思います。シンプルなゲームは、そこからどう発展させていくかを考えることが大事です。また、ゲームは『もう一回やりたい』と思わせる要素が必要です。ランキングや自己ベストの記録などの要素も取り入れてみると良いかもしれませんね」
とアドバイスを行いました。
■2DCGデザイナー育成講座の作品発表
続いて「2DCGデザイナー育成講座」の参加者の発表です。
本講座は、「Live2D」というソフトを使いながら、一枚のイラストをもとに2Dアニメーションを作成する方法を学ぶ内容となっています。
Live2Dは、原画を直接加工できるため、線のタッチや塗りの質感などがそのまま保たれるのが特徴で、多くのゲームや動画、アニメなどで採用されています。
参加者は、女性キャラクターの表情が変化していく様子を描いた作品を発表。途中ミスがあり、締め切り直前に修正するというハプニングもあったようですが、それを感じさせない作品に仕上がっていました。
デザイナー・文野香菜子氏らをはじめとする講師陣からは、「修正指示をしてから数時間で対応していましたが、その対応力は、実際の現場ではとても重要となってきます。キャラクターの喜怒哀楽もきちんと表現されているし、カメラで遊んでいるところも良いと思います」というコメントを寄せていました。
■2Dアニメーター育成講座の作品発表
最後は「2Dアニメーター育成講座」の参加者の発表です。
本講座では「CLIP STUDIO」というペイントアプリを使って、手描きアニメーションの基礎学習と実制作に取り組みました。
今回は各自が制作した、動くLINEスタンプが作品として発表されました。
それぞれにユニークな作品を制作していましたが、参加者からは
「したいことのイメージがあったが、コマ数が多くなり、苦労した」
「サイズを間違えて一から作り直した」
「キャラクターを動かしたかったが、間に合わず文字を動かすだけになった」
など、苦戦した様子が分かる感想が語られました。
講師を務めた康本緑氏は会場に来ることができませんでしたので、共通基礎講座の講師を務めた小川和紘氏による講評が行われました。
「実際のLINE内で使われるシーンを想像してつくられているなと感じます」
「髪や目の光もていねいに描かれているので、このままでも販売できるレベルだと思います」
「何もわからないところから始めて。この短期間で納品できたことが素晴らしいのでもっと自信を持ってくださいね」
など、参加者それぞれの良さを褒めつつ、
「エフェクトの使い方を工夫するとさらに良くなると思います」
「背景を描くことで、表情がより引き立って豊かになる」
「納期を逆算して、スケジュールを立てることにも取り組んでみてください」
など、プロとしてステップアップしていくための具体的なアドバイスも行われました。
■高知でデジタルクリエイターとして働く
全ての作品発表が終わった後は、本講座で学んだスキルを生かして高知県内で働くことができるように、県内のデジタル系クリエイティブ企業の紹介が行われました。
一口にデジタルクリエイターといっても、アニメーションやゲームをはじめ、世界レベルで注目を集めるVJ、メタバースの開発、電子コミックの編集クリエイターなど、その職種はさまざまです。
現在、高知県にはそうそうたる企業が事業所を開設しています。高知県で暮らしながら、日本や世界レベルの仕事に携わることができるチャンスでもあり、興味深そうに説明を聞く参加者の姿がありました。
合同成果発表会の締めくくりは、講座の修了証書の授与式です。共通基礎講座の講師を務めた小川和紘氏より、一人一人に証書が手渡されました。
その後は、参加者、講師、参加企業による懇談会がスタート。
お茶やジュースで乾杯した後、参加者同士でお互いの作品について話をしたり、企業の担当者に自身のポートフォリオ(作品集)を見てもらいながらアドバイスをもらったり、あちらこちらで話が盛り上がっていました。
■参加者の感想
各講座の受講者から受講してよかったことなどの様々なコメントをいただきました。
「もともと絵を描くのが趣味で、CLIP STUDIOも持ってはいたのですが、最近は全く触っておらず、新しい機能についていけなくなっていました。なかなか取り組める時間が取れない自分を思いきって変えたいと思い、今回受講しました。康本緑講師のお話が毎回楽しくて、受講して良かったと思います。また、県内の企業さんのお話も聞くことができ、自分も働いてみたいなと思いました」(2Dアニメーター育成講座参加)
「初めて学ぶことばかりでしたので、ついていけるかどうか不安が大きかったのですが、講師の方々がていねいに教えてくださったので、なんとか今日の発表を迎えることができました。将来はアニメーターの仕事ができれば良いなと思いますが、道のりはまだまだ遠いことも痛感しています。ただ、講師の方に『長く続けることが大事』と仰っていただいたので、地道に頑張っていきたいと思います」(2Dアニメーター育成講座参加)
「分かりやすい講座だったと思います。でも、知らないエフェクトがたくさんありますので、奥深い世界だなと感じました。今日は他の参加者の作品を拝見しましたが、レベルが高くて驚きました。正直言うと『自分が一番だ』と思っていたんですが、まだまだだと思いました。良い刺激になりました」(3DCGデザイナー育成講座)
「軽い気持ちで参加したので講座が始まって本格的な内容だったことに驚きました。頑張ってつくったものが反映されないなど難しい部分もありましたが、それも含めて楽しみながら学ぶことができました。とても面白かったので、今回学んだことを生かすことのできる仕事に就きたいと考えています」(3DCGデザイナー育成講座)